1978年神奈川県川崎市生まれ。現在ヴッパータール(ドイツ)、川崎を拠点に活動する。写真の原点を探るうち最初期の写真術ダゲレオタイプ(銀板写真)を知り、試行錯誤ののち同技法を習得。対象に出会ったときの感覚を、時間と空間を超え見るものに生々しく伝えることのできる〈小さなモニュメント〉として、自身のメディアとしてきた。核の歴史に興味を持ち始めた2010年に第五福竜丸の船体や元船員に出会い、その後、福島、長崎、広島、アメリカおよびマーシャル諸島の核実験場へと、撮るべき対象に自然に巡りあう。近年は映画制作、執筆、共同研究など学際的活動を展開。2014年英国ソースコード・プライズ、2016年第41回木村伊兵衛写真賞、2018年第72回サレルノ国際映画祭短編映画部門最高賞ほか賞歴多数。作品はスミソニアン博物館、ボストン美術館、サンフランシスコ近代美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、ギメ美術館ほか内外美術館に収蔵されている。単著に『百の太陽/百の鏡──写真と記憶の汀』(岩波書店、2023年7月刊行)、『MONUMENTS』(PGI、2015年)などがある。
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「Half Mirror」は、2003年ごろから2006年にかけて撮影したスナップ写真を、当時大阪仙場にあったGallery Space Rondishで2006年に開催された個展に合わせ、まとめたシリーズだ。ギャラリー主催の金谷仁美さんに撮りためた写真を見てもらいながら、いったいどうやって写真を選び構成すればよいのか、途方に暮れたことを覚えている。わたしは夜間の写真学校を卒業したばかりで、取り組むべきテーマも、自分が属する共同体への問題意識も、自分の身体と心が発する声にも無頓着だったが、見つめると見つめ返す他者たち、モノの表面と景色に強く惹きつけられていた。
「森のなかで私は幾度も私が森を見ているのではないと感じた。樹が私を見つめ、私に語りかけているように感じた日もある・・。 私は、と言えば私はそこにいた、耳を傾けながら・・。画家は世界によって貫かれるべきなので世界を貫こうなどと望むべきではないと思う・・。私は内から浸され、すっぽり埋没されるのを待つのだ。」(モーリス・メルロ=ポンティ『眼と精神』滝浦静雄、木田元・訳、みすず書房、1966年)
この画家アンドレ・マルシャンの言葉に覚える強い共感は、撮り始めて四半世紀が過ぎた今も少しも変わらない。眼に映る世界の無限の複雑さ──それをどうして「見た」などと言えるのか。カメラは、視る/視られるものの主客を翻し/翻されながら、世界がわたしを貫くためのプローブであり、半透明にわたしの姿を映すハーフミラーである。
(2026年6月)