覚書)1968年─転換のとき:抵抗のアクチュアリティについて

ゲーテ・インスティテュート・ジャパンにて映像展示「Ausstellung: 1968年―蜂起する路上」、その後関連シンポジウム「抵抗の未来へ」観る。
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/kul/sup/zei/ges.cfm?fuseaction=events.detail&event_id=21245655

Gerd Conradt『Farbtest – Die rote Fahne(カラーテスト‐赤い旗)』(1968)、Thomas Giefer『Happening der Kommune 1 bei der Trauerfeier für Paul Löbe(パウル・レーベの葬儀におけるコミューン1のハプニング)』(1967)、加藤好弘『バラモン』(1971年—1976)、岩田信市『THE WALKING MAN』(1969)ほか。
Gerd Conradtの『Farbtest – Die rote Fahne(カラーテスト‐赤い旗)』は、若者たちが赤い旗をリレーしながら道路を失踪する作品で、カメラは、先導する自動車(おそらくは)から走者たちを正面から捉えている。オリンピック勝者の凱旋を彷彿とさせる演出は単純だが好感を持たせられる。その好感/共感は、パフォーマンスのドキュメントという形式から生まれ、当時の路傍で見守る人々と、映像を見守るわたしたち観客が同一の立場に置かれるためである。本作の正面で上映されている城之内元晴『日大白山通り』(1968)は観るものの時空間とは断絶している(高い資料性と裏腹に)。

路上を占拠し、さまざまなパフォーマンスで異化する行為は、公共空間(物理的および社会的空間)における倫理規制、自己検閲、監視に対する破壊行為/Vandalismに他ならない。なぜ、それが行われまた必要なのか?わたしたちが実際に行動するためには、その行動を前もって見ておく必要があり、それが単なる権利として、あるいは行為の種子として担保されているだけでは不十分だからである(それなりの労苦とリスクを伴う行動であれば、なおさらに)。(*1)
パネリストのSteffi Richter(ライプツィヒ大学東アジア研究所日本学教授)は、岡本太郎が1967年に揮毫した「殺すな」の文字(1967年4月3日にワシントンポストに掲載されたベ平連の意見広告のために揮毫された)がその後、2003年の反・イラク戦争デモ、2014年の反・安部政治デモ、と繰り返し日本のデモ・シーンで使用されてきたことを指摘する(*2)。しかし、そこに社会運動の歴史的連続性よりも──そもそも「殺すな」のメッセージはベトナム戦争中の殺りく行為に対する直接的表明であり、安部政治に対するメッセージとしてインパクトを持ちうるか疑わしい──時間的/空間的な断絶をくりかえす日本におけるデモの参加者たちが、慣れない行動の拠り所として、過去に使用されたスローガンやアイコン、身ぶりを再利用せざるをえない、という事情を見るべきだ。たとえば2012年以降の首相官邸前デモが硬直的で、しばしば単一のスローガンを繰り替えすだけの異様な様相を呈した理由は、デモが、孤立した現象として路上で起こりうるそのほかのパフォーマンス/Vandalismから断絶していたことに一因があるのではないか。

セキュリティの名の下に現代の公共空間から囲い出されていった種々の<狂気>を、不特定多数の人間の眼に触れるやり方で路上に「ぶちまける」こと。エロ、ショック、ギャグ、ナンセンスなパフォーマンスは、目に見えなくなっただけの様々なリアリティの埋め合わせとして、公共空間に十分な量と質で企図され発生しなくてはならないし、それが前衛藝術集団〈ゼロ次元〉の企ての一部だったのではないか。知的障害をもつ人々や、日雇労働者、ホームレスすら公共空間から排除され、地下鉄や街区で見知らぬ人に声をかけることも蛮行/Vandalismと見做される日本の大都市で(*3)(*4)、路上占拠のアート(技法)と実践の必要性は差し迫って明らかである(*5) 。

(*1) のSteffi Richterは柄谷行人の言葉「デモというものができるということを表すために、デモをする」を紹介していた。柄谷行人公式ウェブサイト『反原発デモが日本を変える』http://www.kojinkaratani.com/jp/essay/post-64.html
(*2) 2013年にはアーティスト集団Chim↑Pomが同文字を使用した作品を発表している。CINRA.NET「Chim↑Pom×岡本太郎『殺すな』コラボも発表、岡本太郎記念館の企画展『PAVILION』」 https://www.cinra.net/news/2013/03/21/121758
(*3) 西澤晃彦『貧者の領域──誰が排除されているのか』
(*4) 弁護士ドットコム:「声かけ 迷惑防止条例」の法律相談 https://www.bengo4.com/other/1146/1289/bbs/声かけ+迷惑防止条例/
(*5) 例えば画家の壺井明は福島原発事故に取材した自作の絵画を路上で展示しつづけている。木下昌明「東電の無責任を告発した「原発の図」〜10.14金曜行動レポート」レイバーネット日本 http://www.labornetjp.org/news/2016/1014kinosita

Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.