2021

Daily D-type: 1 Jan 2021, The Sun, Kawasaki

2021年1月1日, 太陽, 川崎 眼の届くところにある恒星を見上げることは、あまりない。 *I post daily daguerreotypes until older posts on Instagram are sorted. To listen corresponding sounds, click the image and see the lower part of the post. インスタグラムに過去の作品がアップ完了するまで、ブログに毎日のダゲレオタイプをアップします. 同録音声を再生するには、画像をクリックして各ポスト下段へ.

Daily D-type: 2 Jan 2021, A Whiskey Glass and a Jar of Persimmon Vinegar (After a party), Kawasaki

2021年1月2日, 柿酢とウィスキーグラス(宴の後で), 川崎 いつもの二人が来て十二時間太鼓を叩いて帰る。わたしは時間を知覚することができないが(そもそも時間は存在しない?)空間に散乱した拍子の結び目を数えることはでき、それを時間と呼ぶのだ──という妄想にとりつかれはじめる。 *To listen corresponding sounds, click the image and see the lower part of the post. 同録音声を再生するには、画像をクリックして各ポスト下段へ.

Daily D-type: 3 Jan 2021, A Pipe on Aluminum Foil, Kawasaki

2021年1月3日, アルミフォイルの上のパイプ, 川崎 映像の背景(文字通りの、background)を無視することは簡単で、それをやめたとたん、地が図を侵食しはじめる。視野の中心に置かれたものに意味はない。 *To listen corresponding sounds, click the image and see the lower part of the post. 同録音声を再生するには、画像をクリックして各ポスト下段へ.

Daily D-type: 4 Jan 2021, A Mirror (an Invisible Self-portrait), Kawasaki

2021年1月4日, 鏡(見えない自写像), 川崎 鏡、あるいはこの底なしの深さのなさ。・・・そして鏡の中で、ひとは無限に表面にいる。(宮川淳『紙片と眼差しのあいだに』) *To listen corresponding sounds, click the image and see the lower part of the post. 同録音声を再生するには、画像をクリックして各ポスト下段へ.

Daily D-type: 5 Jan 2021, A Ring, Given, Kawasaki

2021年1月5日, 贈られた指輪, 川崎 バロネーゼ/Baronesse/何重にも折り返された性差について。名詞の注意深い選択や形容詞に関する新たな禁忌の敷延によって、すでに積みあげられた権力を分譲することはできそうにない。わたしたちはたぶん忘れる必要があるのだが、そのためにまず、所有することをあきらめなければならない。 *To listen corresponding sounds, click the image and see the lower part of the post. 同録音声を再生するには、画像をクリックして各ポスト下段へ.

Daily D-type: 6 Jan 2021, Takebashi, Tokyo

2021年1月6日, 竹橋, 東京 長年撮るうち、都市で自分を見えなくする方法が自然と身についている。街にあって移動は目的たりえないので(旅行者を除いては)、所々に人々が踏みこまない変な隙間があり物陰の水たまりのように静まりかえっている。そこに身体を滑り込ませて三脚を広げ、ピントグラスから向こう側をうかがう。 新聞社のビルからダークスーツの痩せ男が降りて来、顔面から無造作にマスクをもぎとりながら、もう片方の手でスマートフォンをとり出す。身体のいくつかの部分が一度に別々の方向に動かされたので男はよろめき、バランスを取り戻すため頭部をのけ反らせて直立する。 ふと、哀れな、と思う──男のありさまについてではなく、そうするあいだにも彼の姿が銀板にうつしとられ、二百年の時空を超える像を結んでしまうことについて。「TOKYO 2020」の寒々しいロゴとタイポグラフィは人間にとってもはや情報と現実(いくつもの)の区別などどうでもよくなったのだと──あるいはほとんどの価値が現実から情報へ移譲されたのだと──あけすけに告げるように見える。やがて物理媒体によって映像を記録・保持することは社会秩序を乱す行為と考えられるようになり、またデジタル映像の法的寿命が制定されるだろう。モノとしての映像から乱反射する価値のスペクトラムはヒトの社会においてもはやノイズにすぎない。 *To listen corresponding sounds, click the image and see the lower part of the post. 同録音声を再生するには、画像をクリックして各ポスト下段へ.

Daily D-type: 7 Jan 2021, Eroded Shapes (A Photogram of Small Chrysanthemum), Kawasaki

2021年1月7日, 侵食された形(小菊のフォトグラム), 川崎 不意に目にしたアメリカの映像に、涙が出る。それは議会に乱入した人々をとらえた一枚の写真なのだが、画面のはずれに一人の女がいて、唇をとがらせて何かを叫んでいる顔が奇怪な鳥のようにみえ──どうしてそんな姿になってしまったのか──恐ろしくも、どこか既視感のある映像(それは敗戦直後のドイツの写真で見た他の誰かだったのか……思いだせない)にも思えるのだった。 TwitterやFacebookやInstagramやそのほかのソシアル・ネットワークはもうすぐ時代遅れになる、というよりむしろ時代遅れにしなければならない。それらの道具は、今世界をおおう静けさに耳を傾ける機会を──それは近代以降はじめて、わたしたちに訪れた好機だったのだが──すっかり台なしにしてしまった。 すべての人々、想像もできないほど遠い人々とおなじ脅威を生きる今日、本当に話しかけるべき人は実は少ないのだと、みな気づいたはずだった。電話せよ(Facetimeせよ/Skypeせよ/Zoomせよ)──その人々に。顔のまわりから目移りと喧騒を取りのぞいて、寂しさのなかに自分の姿を見よ。

Daily D-type: 8 Jan 2021, Some Ingredients for Canned Mackerel Curry in the South Indian Style, Kawasaki

2021年1月8日, サバ缶の南インド風カレーのためのいくつかの材料, 川崎 「サバ缶の南インド風カレー」 材料)サバの水煮缶、大根1/3本、トマト1個(またはトマトの水煮缶1/3)、タマネギ1/2個、にんにく1片、ショウガ1片、青トウガラシ3本、タマリンド大匙2(なければ梅干し1個を刻んだもの+酢大匙1)、ココナッツオイル(なければ他の食用油)、塩 スパイスA)コリアンダーパウダー大匙1、パプリカパウダー大匙1、ターメリック小匙1/2、フェネグリークパウダー小匙1/2、ヒン(あれば)小匙1/4、辛口にしたい場合は更にチリパウダー小匙1/2 スパイスB)マスタードシード小匙1/2、赤唐辛子2本、カレーリーフ6-7枚 1. タマネギはスライス、ショウガとニンニクは千切り、青唐辛子は斜めにスライスする。タマリンドはぬるま湯300ccに浸してやわらかくしてから、手でほぐしておく(タマリンド水)。 2. 大根を乱切りにして、トースターか魚焼きグリルで所々焦げめがつくまで焼く。(省略してもいいがやや大根臭くなる) 3. 鍋にココナツオイル大匙1を入れ、タマネギを中火で炒める。しんなりしたら1の残りの材料と塩少々を入れさらに炒める。 4. タマネギのへりが色づいたらスパイスAを入れ、2-30秒かき混ぜて香りが引き立ったら、トマトを入れて馴染むまで炒める。 5. タマリンド水、大根を入れて強火に。沸騰したら弱火でフタをして10分煮込む。 6. 大根に十分火が通ったら、サバ缶を煮汁ごと入れる。 7. 別のフライパンにココナツオイル大匙1をあたため、マスタードシードを入れフタをする。マスタードシードがはぜ終わったらフタをとり、残りのスパイスBを入れて10秒ほど待つ。 8. 7の油ごとメインの鍋に加え、味が馴染むまで数分煮込む。この間、味見しながら塩加減を調整。 9. ご飯と一緒に供する。カレーは翌日まで置いたほうが、どういうわけか魚臭さが減るようだ(本場インドでは作り置きはしないとか)。

Daily D-type: 9 Jan 2021, Multiplying the Sun, 2:10-2:27pm, Kawasaki

2021年1月9日, 太陽の複数化, 午後2時10分から17分, 川崎 所用あり街へ。寒そうな雲が空に浮かんでおり、透きとおった大気が心地よい。大井町線は混雑しており、通りには人があふれている。形式だけの「緊急事態宣言」(とはいえ仕事によって被るダメージははかりしれない)につきあうほど人々は愚かでないし、同時に、愉しみをあきらめるほどいま起きていることを了解したくないのだろう。 予約の店に入ると出てきたスポーツウェアの青年が、コロナのために予約以外は店を開けておらずこんな格好ですみません、と詫びる。けれどこちらとしてはかえって気楽で嬉しい。 コロナが去って、世の人々がいい加減になりますように。敬語と謙譲語が廃絶されますように。むやみに人語を話すうるさい機械たちが、火を吹いて故障しますように。