ヘルシンキ滞在7日目、早くも時間が、季節が惜しい。島の東の入江から陽が上り、西の地平線に、ヘルシンキ郊外の平坦な森へ、陽が沈む──滑らかな日時計の盤面の上の暮らしは、それでも、東京圏の焦燥から果てしなく遠い。
この時期みなが口を揃えて言う ruska は日本語のガイドブックで「紅葉」と訳されるが、元はサーミ語形容詞の ruškat(茶色い)が語源でその程度は ruškadit、ruškadeamos と極まっていく。
昨日まで吸い込まれそうな青空だったのが今日は乳白の雲に覆われ風も出ている。明日には雨になり、やがて長い夜の季節がやってくる。Olkuluoto でのダゲレオタイプ撮影がうまくいくかどうか。
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8×10インチ版プレート用のコーティング・ボックスの輸送ができなかったので、こちらで製作することにした。フィンランドには Home Depot のようなホームセンターはほとんどなく(空港の近くに Bauhaus があり、街中にいくつかハードウェア店があるが品揃えは乏しい)、Amazon のような大規模オンライン・ショップもない。加えてわたしのスタジオは島で車の乗り入れが原則できないので苦労は多い。考えてみれば、どこでも車で買い物に出かけてゆき、なんでも一日や二日で配送される日本やドイツの、アメリカナイズされた消費文化が異常なだけだ。
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テストを兼ねた毎日のダゲレオタイプは概ね順調、しかし金調色(gilding)で問題が発生し数枚の素晴らしいプレートを駄目にした。
調合液のpH まで調べても原因がわからなかったが、薬局で購入した精製水の問題と判明。局員が distilled water と間違えて sterilize water を持ってきたことに気づかなかった(後者は傷口の洗浄などに使う精製水でイオン除去を行っていない)。中央駅の Tokmanni というディスカウント・ショップでバッテリー補充液を見つけ、ようやく解決。
購入リスト:
針葉樹板材(5mm, 10mm)
板ガラス
燃料用アルコール
ガス・トーチ
シリコン・グルー
木部ニス、刷毛
マイク・ポール
折りたたみ式ワーク・ベンチ
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